「君がよくする「友達」の話だけどさ」
「友達?」
「妖精とか、ユニコーンだよ」

アメリカが言えば、イギリスはああ、と思い付いた様に声を上げる。
何も身につけていない身体にシーツを巻き付けてから肩を竦めた。

「今はいねぇよ。お前と…その、こーいう最中は部屋に入らないよう言い付けてあるし」

照れて染まった頬を人差し指でぽりぽりと掻きながら俯いて言うイギリスは、ちらりと横目でベッドに横たわるアメリカに視線を流した。
更に小声で、邪魔されたくねぇし、と呟くと、アメリカの顔にあからさまな不機嫌が表れる。
上半身を起こしてベッドサイドに置いておいたテキサスを手に取り、そのまま手に握り混んで膝を抱え込んだ。
そして吐き出される溜息に、イギリスは目を丸める。

「なんだよ」
「君、友達ならちゃんと言い聞かせるべきなんだぞ。煩くて仕方ないよ」
「煩い?」

アメリカの言葉に、イギリスは瞬いてマカライトの瞳を鈍く歪ませた。
手にしたテキサスをかけて肩を竦めたアメリカは、そんなイギリスに向かって口を尖らせて見せる。

「俺は君の趣向に付き合って少し酷くしてあげてるだけなのに、鬼畜だのイギリスを泣かせるなだの…全く煩くて集中できないよ」
「ち、ちょっと待て。お前一体なんの話してるんだ…?」
「だから、妖精とかピクシーだよ。人のセックスにケチつけるだなんてナンセンスだ」

ぶつぶつと文句を言い続けるアメリカを呆然と眺め、イギリスは顔を蒼白とさせた。
そんなイギリスに気付いたアメリカはやっぱりね、と呟いてから呆れを含んだ表情を浮かべる。

「君には見えて無かったんだ」
「だ、だってそんな…じゃあ何か?今までの全部…」
「君の家で抱いてる時は必ず茶々入れに来るぞ」
「っ…!」

それきりイギリスの動きが固まって止まる。
けれどそんな事気にしないとばかり、アメリカは大袈裟に溜息を吐いてから部屋を見渡した。

「まぁ、見えるのは君を抱いてる時だけだけどね。今はもう見えないや。居ないんだろう?」
「………、」
「イギリス?」
「…ばっ、ばかぁああっ!!」
「ぶっ!」

ばふっ、とアメリカの顔面目掛けてクッションが飛んでくる。急な事に避け切れなかったアメリカは、もろにその攻撃を受けてしまった。
ずる、とズレたクッションを手でキャッチして見れば、イギリスはシーツに全身包まってふるふると震えている。
力一杯ぶつけられたクッションが思いの外痛くて、アメリカはその塊に覆いかぶさって全体重をかけた。

「ぐっ、重いんだよこのメタボ!」
「重くしてるんだよ。大体何でばかって俺が言われなきゃならないんだい?」
「お、お前がもっと早く言えば結界張るなり出来たじゃねーか!」
「っ、」

頭部分のシーツを剥ぐと、涙目のイギリスがキッとアメリカを睨み上げた。
潤んだ目と、きゅっと引き締まった唇。
情事後間もないアメリカの身体は不覚にも脈打ち、再び下半身に熱が集まるのがわかる。
そんな事に気付きもせずに、イギリスはわなわなと身体を震わせてぎゅっとシーツを握りしめた。

「あれもこれも…全部全部、あいつらに見られてたってーのか…?」
「…そうだよ。多分、今からもね」
「は?…なっ、」

イギリスが握りしめていたシーツを一気に剥いで、素早く覆い被さり身体を押さえつける。
首筋に短くキスを落とすと、状況を理解したらしいイギリスが力に逆らって身を捩った。

「暴れるなよイギリス。後ろに入ったままの、溢れちゃうぞ」
「ばっ、ばかぁっ!おま、何もうでかくして…」
「君の所為なんだぞ。それに俺は若いからね。責任取ってくれよ」
「だめ、駄目に決まってんだろ!だってあいつらが、」
「見せつけてやればいいよ」

言って、アメリカはイギリスの口を塞いだ。
例えどれだけ嫌がっても、喚いても。すぐに大人しく快楽に身を任せる事なんてとうの昔から知っている。
きっとこの欲望を押し込めれば、再び幻覚が現れるのだろうという事も承知の上で。
どれだけ耳元で騒がれたってやめてやらないと、密かに心の中で決意した。



09.07.04